科学技術社会論研究
Online ISSN : 2433-7439
Print ISSN : 1347-5843
原著
食品安全行政の制度に組み込まれたリスクコミュニケーション
ディスコミュニケーションの新たな要因と消費者団体が直面する問題
吉田 省子
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2021 年 19 巻 p. 109-124

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抄録

 中島貴子は2004 年に,食品安全委員会のBSEリスクコミュニケーションを検討し,行政や専門家と消費者との間にディスコミュニケーションが存在すると指摘し,その要因を論じた.本稿の目的は二つある.一つは,2004 年と2013 年のBSEリスクコミュニケーションを検討し,別の要因を指摘することである(3 ~4 章).それは,食品安全委員会と憂慮する市民―消費者との間に存在する,リスクコミュニケーションへの期待あるいは解釈の差異である(3 章).その差異は,日本の枠組みでは明示的ではない2 つの概念の不在に関連づけられる.IRGCのリスクガバナンスの枠組みが含む「懸念評価」とコーデックスの「その他の正当な要因(OLFs)」である(4 章).

 この状況下で消費者団体がリスクコミュニケーションの問題に直面する時,消費者団体は,あたかも自粛するかのように口を閉じてしまう可能性がある.この沈黙という状態を“scienceplanation”という概念を用いて示すのが,第二の目的である(5 章).6 章では,打開策として,ボトムアップでの物語作りの可能性が述べられる.

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