抄録
Hemoglobinのheme結合基はhistidineのimidazole-Nであると一般に信じられている。従つて遊離のhistidineについてheme或はhematinの結合の様子を知ることは極めて興味の深いことである。以下に光電分光々度計を用いて行つた実験結果を報告する。
1)Heme或はhematinにhistidineの結合したhemochrome或はhemichromeの吸光像は,heme或はhematinにpyridineや変性globinが結合した場合のものと殆んど一致する。
2)Soret-bandの吸光度変化から測定されたhistidine-hemichromeの解離の次数はhistidine濃度に対して2次である。
3)この解離曲線のpKはhistidineのimidazole-NHおよびhematin-Feの解離によつて変動し,その実測値はpHの函数として理論的に導かれた次の式を満足する。
pK=pK0-2log(1+[H+]/Ka-log(1+Kb′/[H+])
実測pK値より算出されたpK0は室温約20℃に於て3.6であつた。
4)Histidine-hemochromeはそのhemichromeをNa2S2O4、で還元する際,溶液中の酸素のために分解が起りその解離平衡を扱うことは技術的に困難である。