抄録
SGLDHの主として, 肝局在性障害診断の意義を検討し下記のごとき結論を得た.
1) 健常者男性89例, 女性44例の早朝空腹時SGLDH活性は男性2.5±1.1mU/ml, 女性1.7±0.4mU/mlで男性のほうが有意 (p<0.001) に高く, 性差がみられた. これら対象例中から飲酒者を除外して比較しても同様に性差がみられた.
2) 健常者男性で, 飲酒による影響をみるために, 毎日飲酒する者と非飲酒者のSGLDHを比較したところ, 飲酒者39名のそれは2.9±1.4mU/ml, 非飲酒者39例のそれは2.3±0.8mU/mlで, p<0.05の危険率で飲酒者群のほうが有意に高値であった.
3) AMI41例においてSGLDHの高値は56.1%にみられ, かつ胸痛出現9時間後に最高値をとり以後漸減した.
4) AMIの重症度をKillip & Kimball分類によって分け, これとSGLDHとの関係を検討したところ有意の正の相関関係を認めた. また経過中, 一過性に重症不整脈を生じた例は生じなかった例に比べ, SGLDHが有意に高値であった.
5) AMI例において心血行動態の指標とSGLDHの関係を検討したところ, 中心静脈圧とのみ有意 (p<0.05) の正の相関関係をみた.
6) AMI以外の疾患によるうっ血性心不全で静脈圧が10cmH2Oをこえる22例のSGLDHは6.7±3.4mU/mlで90.9%に高値を呈した.
7) ウサギ5羽に低酸素負荷を行い, 経時的にSGLDH, SGOT, SGPTを測定したところ, SGLDHが最も早期から上昇し, AMI例にみられたのと同様の成績を得た.
以上, ハイポキシアによる肝小葉中心性障害の早期発見にはSGLDHの測定が, SGOT, SGPTの測定よりはるかに有用であることが示唆される.