AMI 47例を対象として, BS, 血中IRI, IRG, 総CAを測定, 心血行動態と対比し, 以下の成績を得た.
1) 梗塞後BSの上昇は, 梗塞範囲の大なるもの, 予後不良のものに著明であった.
2) 糖尿病既往の有無にかかわらず, BSとCAはKillip分類よりみた心不全の程度が重篤なものほど高値であった.
3) IRIは, 心原性ショックを呈するKillip 4群において上昇, IRGは糖尿病既往群のしかも心原性ショックを有するもので高値を示した.
4) BSはHR, CVP, CIおよびSVIとの間に有意な単相関関係が認められたが, 重回帰分析によると, 特にSVIの低いものほど高値を示した.
5) IRIはHR, CVP, CI, SVIと, IRGはCVPとそれぞれ有意な単相関関係が認められたが, 重回帰分析によれば, IRIもIRGもCVPが高いほど高値を来し, この関係は糖尿病既往群においてより顕著であった.
6) CAはHR, PCWP, CVP, SVIとの間に有意の単相関関係を有し, 重回帰分析にてHRが高いほど (糖尿病非既往例ではSVIが低いほど) 高値であった.
7) 上記重回帰分析によれば, 糖代謝に対する心血行動態の寄与率はおよそ20~30%である.
8) 心血行動態各パラメータのうち, 特に糖代謝と関係の深かったCVPとSVIを選び, 棄却楕円を用いて検討するに, これらに異常の認められた症例のうち, 79%が糖代謝に関する四つのパラメータのいずれかによっても異常と判定された.
9) かかる心血行動態の異常を判別しうる実数値を算出したところ, BS 210mg/ml, IRI 32iu/ml, IRG342pg/ml, CA 0.77ng/mlが得られた.
10) 経日的変化をみるに, BSは第1病日が最も高く, 以後漸減した. 経過中, 上記循環動態と判別しうるBS 210mg/dlを超えた症例の93%の心血行動態は異常を示し, 53%が死亡した.
11) IRIはBS同様, 第1病日が最も高く, 第7病日には有意に低下したが, 第14病日には再び増加した. また, IRI 32iu/mlを超えた症例の94%の心血行動態は異常を示し, 44%が死亡した.
12) IRGは第3病日に最も高値を呈し, 以後徐々に低下した. 前述のIRG 342pg/mlを超えた症例の88%は心血行動態に異常が認められ, その死亡率は50%であった.
13) CAは第2病日が最も高く, 病日とともに低下した. 経過中, CA 0.77ng/mlを超えた例の93%の心血行動態は異常を示し36%の死亡率であった.
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