日本神経回路学会誌
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解説
神経スパイクデータからシナプス結合を推定する
小林 亮太
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2023 年 30 巻 2 号 p. 66-72

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抄録

計測技術の進展により行動中の動物の脳から,より多くの神経細胞の活動を,より長い時間にわたって計測できるようになってきた.神経細胞は他の細胞からシナプス入力を受けてスパイクを生成するので,神経活動データから神経細胞間の因果関係を抽出することにより,直接計測できない神経細胞間のつながり(シナプス結合)を推定できることが期待される.このような考えは50年以上前から提案されていたが,周囲の神経細胞の活動や変動する外部信号の影響も加わって現象が複雑となるため,信頼性の高い推定結果は得られていなかった.本解説では,複数の神経細胞から同時計測されたスパイク信号からシナプス結合を高精度に推定するデータ解析技術 GLMCC(Generalized Linear Model for Cross-Correlation)を解説する.シミュレーションデータや実験データに適用した結果,GLMCCは従来の手法に比べて高い精度でシナプス結合を推定できることを確認した.データ解析技術 GLMCCにより,さまざまな脳領域における情報の流れや情報処理様式が明らかになることが期待される.

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© 2023 日本神経回路学会
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