脳は異なる役割を担う部位の集合体であり,各脳領域の神経細胞がシナプスを介して神経回路を形成し,その神経回路に機能が生まれると考えられている.しかしながら,多領域を越えて単一細胞の解像度で神経回路の活動を計測する観測系は確立しておらず,広域に渡る神経回路の機能的構造は不明であった.我々は広視野・高解像度・高速撮像・高感度・無収差を同時に満たす2光子励起顕微鏡「FASHIO-2PM(fast-scanning high optical invariant two-photon microscopy)」を開発した.マウス大脳皮質2層に存在する1万6,000個以上の神経細胞の活動を,9mm2(従来の36倍)の単一視野面から7.5Hzの撮像速度で高感度に測定することに成功した.単一神経細胞の活動に基づく機能的ネットワークを解析したところ,脳はスケールフリーネットワークではなくスモールワールドネットワークの特性を有することが明らかになった.同時に長距離の機能的結合も含め100以上の細胞と協調的に活動する非常にレアなハブ細胞(存在確率は1%未満)の存在も明らかにした.
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