2026 年 33 巻 1 号 p. 33-41
複雑かつ精緻な神経回路を基盤とする脳機能の解析にとって,特定の神経細胞や神経回路の選択的操作を可能にする遺伝子導入技術は強力なツールである.現在,神経活動操作の主要な手法として,化学遺伝学的手法と光遺伝学的手法が広く用いられており,それぞれ異なる特性と利点を持つ.これらの技術は今後もシステム神経科学研究にとって重要な位置を占めることは間違いないが,高次認知機能研究などに重要な非ヒト霊長類への適用は遅れている.本稿では,マカクザルでの実験に興味はあるが経験はない,というシステム神経科学分野の研究者に向けて,ウイルスベクターを用いた神経路操作実験について紹介する.まず,筆者がこれまで使用してきた化学遺伝学的手法を中心に神経路操作技術について概観する.その後,筆者の研究テーマである社会的認知機能を対象とした,統御下における課題遂行時の実験と,自由行動環境下での実験の具体例を紹介する.