抄録
医療用ウィッグは,がん化学療法により脱毛を呈した患者の生活に必要なものである.しかし,ウィッグ装着時の暑さや蒸れが原因で装着を中断せざるをえないケースも少なくない.本研究は,健常者20名を対象にウィッグ着用時に使用するインナーキャップの素材をガーゼとドライ素材(吸水速乾素材)の2種類を用いてクロスオーバー比較試験を行い,暑熱感を軽減できるか検証した.日本の真夏の温度,湿度に設定した人工気象室で,ウィッグ内の発汗量,温度,相対湿度を各素材30分間ずつ測定し,実験前後でサーモグラフィーを用いて体温を測定した.発汗量の多かった2名の被験者では,ガーゼよりもドライ素材のほうが発汗量は少なかったものの,インナーキャップの素材によるウィッグ内の温湿度,対象者の暑熱感に明らかな違いはみられなかった.よって,今後はウィッグ本体で暑熱感を軽減できるよう開発をしていく必要がある.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→がん化学療法で脱毛した患者は医療用ウィッグが必要となるが,着用時の暑さと蒸れがQOL を低下させる.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→今回の結果は,将来的に医療用ウィッグの改良を検討する際の一助となる可能性がある.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→暑熱感が少なく,着用を継続するうえで負担の少ないウィッグ本体の開発も検討が必要である.