看護理工学会誌
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原著
妊婦体験ジャケット装着前後の靴下を履く動作の変化と代償動作
−動画像と姿勢推定アルゴリズムを用いた検討−
野田 真優子齋藤 いずみ和泉 慎太郎
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2022 年 10 巻 p. 12-21

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抄録

 妊娠の経過に伴い腹部は増大し,妊婦の日常生活動作は変化していくと考えられる.妊娠後期の妊婦の体型変化を妊婦ジャケットで再現し,妊婦ジャケット装着前後の動作パターンの変化を明らかにし,妊婦への保健指導に対して有用な示唆を得ることを目的とした.17名の女性を対象にジャケット装着前後に端座位で靴下を履く動作を実施してもらい,記録した動画像から動作の特徴的変化を観察・評価した.姿勢推定アルゴリズムにて関節位置を推定し3次元の座標情報を抽出した.関節角度を算出し主成分分析にて動作パターンの傾向を分析した.端座位の場合,装着前は大腿を正中面に平行に引き寄せて靴下を履く者が8名(47.0%)と多く,装着後は股関節を外転・外旋しあぐら様に引き寄せる者が9名(52.9%)と多かった.代償動作として股関節を外転・外旋しあぐら様に引き寄せる(開排位)動作を認め,股関節のストレッチや靴下着用自助具の活用を取り入れる必要性が示唆された.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→腹部が増大することは,日常生活動作に大きな影響を与える.そのため妊娠時は非妊娠時に比してさまざまな場面で日常生活動作の変化が生じると考えられますが,妊婦の動作時の負担感や不便さは表面化しにくいことから本研究を行いました.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→今後,本研究で明らかになった動作パターンを課題動作とし,腹圧のかかり方などを定量的に調査することによって,妊婦の負担を軽減する動作を明らかにできると期待されます.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→靴下着脱のような複合動作を学習するためのサンプルを集めて,機械学習を用いた骨格認識の精度の改良を行う必要があります.

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