2023 年 10 巻 p. 88-99
本稿では,歯茎モデルと計測用センサの着脱が可能な口腔ケアシミュレータを提案した.ねじり操作だけでモデルの交換が可能な接合パーツを構築し,歯茎モデルと接合パーツが一体形状となったモデルを設計した.モデルはオーバーハング部分の傾斜がすべて45°以上で設計されているため,一般的なFDM(fused deposition modeling)方式の3Dプリンタでサポート材を使用せずに出力することができる.さらに本稿では,人工プラークを用いた練習方法に対応した表面加工方法について検証した.また,接合パーツのみを出力して既存のモデルに設置することで,市販の歯茎モデルなどを使用する方法についても示した.提案するシミュレータではモデルの交換が容易なため,さまざまな形状や疾患の歯茎について練習でき,計測用センサを複数人の練習者で共有することも可能である.試作機を用いた検証実験より,さまざまなモデルに対しブラシの接触位置,法線力,接線力をリアルタイムで計測できることを確認した.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→ センシングが可能な口腔ケアシミュレータを,教育に導入するうえで生じるコストの問題に着目している.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ センシングが可能な口腔ケアシミュレータを用いた,多人数を対象とした口腔ケア教育が実現できると考えられる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→実際の看護・介護教育現場での実証実験が必要である.