看護理工学会誌
Online ISSN : 2432-6283
Print ISSN : 2188-4323
ISSN-L : 2188-4323
原著
妊婦体験ジャケット着用時の姿勢・歩容・腰部負担感の分析−ヒール高による比較−
塩見 咲良寺澤 瑛利子鳥居 万椰村上 貴人落合 陽一金澤 悠喜岡山 久代
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 11 巻 p. 168-179

詳細
抄録
 妊娠中の女性には2-3cm のヒールのある靴が推奨されているが,着用による姿勢や歩容の実態や影響についての研究は少ない.本研究の目的は,妊婦体験ジャケットを着用した模擬妊婦を対象に,ヒールの高さから前足部のストームの高さ(つま先部分の厚み)を引いた差の値を意味するヒール高1,3,5cm の靴を着用した際の姿勢や歩容,腰部負担感を比較し,その影響を明らかにすることである.15名の模擬妊婦を対象に分析した.その結果,模擬妊婦の体幹角度は非妊娠時よりも後傾するが,ヒール高では変化しなかった.また模擬妊婦も非妊娠時と同様にヒール高が高くなることで歩幅は短く,歩行速度は遅くなることが確認された.非妊娠時,ヒール高で腰部負担感は変化しなかったが,模擬妊婦ではヒール高5cm で増強することが示された.よって妊娠中の女性がヒール高5cm の靴を着用することは腰部の筋負荷を増強させる可能性があるため,推奨されない.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→妊婦が着用する靴は,2-3cm のヒール高があるものが推奨されていますが,十分なエビデンスはありませんでした.まずはこの点を検証したいと思いました.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 妊娠中の女性が,腰部に負担のかからない靴を選択するための一助になると考えます.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→異なるヒール高の靴を着用した際,妊娠中の女性が感じる腰部負担や姿勢変化を定量的に評価するための技術が必要と考えます.
著者関連情報
前の記事 次の記事
feedback
Top