抄録
少子高齢化に伴う看護師不足に直面している日本の多くの病院では,看護業務量や業務動線などの客観的なデータに基づいて業務効率を改善する必要がある.本稿では,低コストで長期的な調査が可能な,ビーコンとモバイル端末を用いた無人タイムスタディにおいて,ビーコンが発する電波の受信信号強度系列から病棟看護師の業務動線を推定し,動画として可視化するためのソフトウェアフレームワークを構築した.特に,多数の病棟を擁する大規模病院においても容易に遂行できるように,教師あり機械学習を用いることなく簡便に業務動線を推定する手法を提案する.さらに,Data-Driven Documents(D3)を用いて,推定された業務動線を動画として可視化するソフトウェアを開発した.大規模急性期病院の病棟で実施した無人タイムスタディを用いて本ソフトウェアフレームワークの動作デモを行い,病棟全体にわたる各看護師の業務動線の実態を詳細に把握できることを示す.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→テーマ:簡便な看護業務量調査と客観的・量的データを活用した業務改善の実現.
きっかけ:病棟全体にわたる看護師全員の動きを可視化することができれば面白そうだと思ったこと.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 業務改善やICT 機器の導入などのイベント前後における業務量や業務動線の違いを客観的に比較できるようになる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→詳細な業務内容まで考慮した分析を行うためには,看護に特化した大規模言語モデルが必要になる.