抄録
本研究の目的は,看護演習に対して,ワークシートを用いた従来の対面のグループ学習による学習法とくらべて同等かそれ以上の学習効果を得られる人工現実技術を用いた個人学習による新たな学習法を構築することである.著者らは,81名の看護学生を対象に,患者がトイレに行く際に起きる転倒のインシデント場面を,40名が人工現実技術を用いた個人学習による学習法,41名がワークシートを用いた従来の対面のグループ学習による学習法で学習し,85問の確認テストと内観報告からその学習効果を比較・検討した.その結果,人工現実技術を用いた個人学習による学習法は,ワークシートを用いた従来の対面実習による学習法と同程度の学習効果であった.この結果は,人工現実技術を用いることで,学習者が時間と場所の制約を受けず,従来のグループ学習による対面教育と同等の教育効果を得られる個人学習による新たな学習法を構築できた可能性を示唆するものである.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→限られた時間のなかでさまざまな看護技術の習得を求められる看護学生が学習環境に依存しない学習の場を得られるようにしたいと考えた.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 本研究の成果は時間や場所に制約されない看護の臨床現場で起きるアクシデントやインシデント場面の個人学習の確立に貢献できる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→力触角デバイスなどを含むマルチモーダルなバーチャルリアリティプラットフォームの開発が必要となる.