看護理工学会誌
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原著
前立腺がんに対する強度変調放射線治療期間中のcone-beam CTにおける直腸内容物と直腸面積
水谷 洋臺 美佐子林 真也齊藤 泰紀神納 美保西田 洋角矢 智恵髙井 亜希須釜 淳子眞野 惠子
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2024 年 11 巻 p. 247-254

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抄録
 前立腺がんの強度変調放射線治療において,直腸障害のリスク低減には直腸内容物の減少が不可欠である.治療計画時のCT と各治療期間中のcone-beam CT(CBCT)から直腸内容物を評価し,直腸の放射線曝露の頻度の減少に努めている.しかし,曝露要因となりうる直腸の拡張については,強度変調放射線治療中に直腸がどの程度拡張するかは不明である.そこで,今回,直腸内容物の有無と直腸面積を明らかにした.CBCT から直腸内容物貯留の有無の評価と直腸横断面積を計測した.面積は治療計画時との比を算出し,直腸内容物の有無で比較した.前立腺がん患者44名,平均年齢72.9歳,BMI22.4kg/m2,照射回数は最大39回であった.CBCT で,直腸内容物あり群(201枚)の直腸面積比は,直腸内容物なし群(349枚)にくらべ有意に大きかった(1.23vs. 1.04,P‹0.001).直腸の拡張による放射線曝露の低減には,簡便な直腸内容物の評価法と排泄ケア改善の必要性が示唆された.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→患者は,治療前に膀胱内を尿で充満させ,かつ直腸内容物を排泄するという,困難な自己管理に努めなければならない.特に,ガスの排出は難渋することが多く,駆風浣腸を行う施設も多い.がん放射線療法看護認定看護師として,治療前の直腸内,特にガスの存在の確認とその場でガスの排出を促進するケアの必要性を感じていた.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 直腸内容物の画像を用い,他施設でも使用できる評価法の開発に貢献できる.画像をもとに直腸内容物が多い患者を抽出し,食事療法や運動療法などの生活指導を取り入れたケアのアルゴリズムの開発につながることが期待される.さらには,駆風浣腸という不快な処置を回避でき,自尊心の保障と心理的な負担の緩和も期待される.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→ガスを含む直腸内容物を簡便に評価するため,新たな技術開発(エコーなど)が必要と考える.
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