看護理工学会誌
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速報
環境センサデータを用いた介護施設入居者行動のLong Short-Term Memoryによる予測
日置 秀憲深沢 圭一郎鈴木 臣村井 孝子
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2025 年 12 巻 p. 100-110

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抄録
 近年,日本は深刻な高齢化に直面している.この課題に対処するため,介護現場ではサービスの向上を目的とした各種センサを活用する取り組みが行われている.しかし,被介護者の状態を直接観測するセンサを使用することは負担が大きい場合もある.そこで,本研究では,被介護者に大きな負担をかけることなく取得できる環境センサデータを用いて,その行動状態を機械学習によって推定する手法を実装した.具体的な実装は,時系列データのもつ長期の時間依存性を処理に反映できる機械学習手法であるLSTM(long short-term memory)を利用して,各時点での被介護者の状態を就寝,起床,外出の3つに分類するという形で行った.また,実装した提案手法と機械学習を用いない既存手法について正解率の比較を行い,提案手法が既存手法より精度の面で優れていることを確認した.最後に,提案手法の介護現場での活用を見据えた応用手段について検討した.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→看護・介護者の負担軽減を目指し,安価で非接触型の自律的見守りシステムを開発するうえで,汎用的な環境センサ情報を用いて対象者の行動を高精度で予測したいと考えたことが本研究のきっかけとなります.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 看護・介護者が容易に対象者の状態を知ることができるようになり,負担の軽減が望めます.また状態認識の精度を上げたことで,再確認の手間やシステムの信頼性を向上でき,将来の自律的な状態認識に貢献できます.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→本研究では,機械学習(AI 処理)を利用しており各現場に依存した精度向上を行うため,状態認識が合っているか看護・介護者からフィードバックを受ける仕組みが必要と考えられます.
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