看護理工学会誌
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速報
経膣分娩の児のストレスと臍帯動脈血コルチゾール濃度の関連
稲葉 弥恵子
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2025 年 12 巻 p. 214-219

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抄録
 目的:経膣分娩の正期産児のストレスの客観的指標の候補として,臍帯動脈血コルチゾール濃度とアプガースコアの関連を調査・検証し,助産師による新生児の援助に役立てること.方法:出生直後の臍帯動脈血を採取しコルチゾール濃度を測定した.臍帯動脈血コルチゾール濃度を独立変数とし,生後1分のアプガースコアを従属変数として分析を行った.結果:相関は認めなかったが,アプガー10点の児は9点以下の児よりコルチゾール濃度が有意に高かった.考察:コルチゾールは,胎児肺でのサーファクタント産生に関与しているため,アプガー10点の児はコルチゾール濃度が高い可能性がある.結論:コルチゾール測定は,助産師が新生児を安心・安全に援助するために活用できる可能性があり,かつ,正常正期産児の異常の発見や予測ができる可能性もある.今後は,児の唾液を採取・測定することで,墜落分娩の児の状態を知ることやさまざまな看護の発展に繋がる可能性があると考える.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→正期産児について,生後1分のアプガースコアが正常であっても,その後,児が急変することがある.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 臍帯動脈血中のコルチゾール濃度を新たな指標として活用することで,出生直後の状態が良好であっても,後に急変する可能性のある児の予測や観察強化が可能になると考えられる.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→コルチゾール濃度の簡易測定器があれば,新生児の急変を予測することと,墜落分娩の児の状態が把握できる可能性がある.
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