抄録
精神科では,精神症状のため終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)が困難な場合,非接触型睡眠計測センサー(眠りSCAN)の活用が期待される.同センサーの睡眠覚醒アルゴリズム(Coleモデル)は患者特性が考慮されておらず,性能が低下する可能性がある.2021年8月~2023年1月にPSGを受けた精神科入院患者29名(男性55.2%,中央値61.0歳)を対象に,Coleモデルに患者特性を組み込んだロジスティック回帰モデル(PACモデル)を構築した.本研究では,眠りSCANの睡眠覚醒判定とPSGが一致する割合を一致率とした.PACモデルの一致率,感度,特異度は78.8%,94.5%,38.9%となり,Coleモデル(77.8%,97.3%,28.2%)とくらべ特異度(覚醒判定)が向上した.本研究により患者特性を考慮したアルゴリズムの有用性と,眠りSCANの精神科での適応可能性が示唆された.
【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→精神科での睡眠評価は従来法では患者負担が大きく,正確な評価が困難である.体動のみで判定する非接触型センサーの精度向上のため,患者特性を考慮したアルゴリズム開発を試みた.
2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 特異度の向上で覚醒判定の精度が高まり,客観的な睡眠評価が期待できる.
3.今後どのような技術が必要になるのか?
→電子カルテと連携した睡眠評価システムの開発が求められる.