看護理工学会誌
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原著
創部pHと創部-創周囲皮膚間の細菌叢非類似性の関連
國光 真生仲上 豪二朗赤瀬 智子木下 幹雄大江 真琴
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2025 年 12 巻 p. 91-99

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抄録
 目的:創周囲皮膚の細菌叢の類似性が低いディスバイオシス状態の創部細菌叢は治癒遅延を惹起する可能性が高いが,細菌叢を評価するポイントオブケアテストはない.そこで,本研究は創部pH と創部-創周囲皮膚間の細菌叢非類似性の関連を明らかにすることを目的とした.方法:本横断研究では,肉眼的感染徴候のない皮下組織をこえる難治性創傷を調査した.pH 測定センサを用いて創部pH を測定し,細菌叢は16S rRNA解析により同定した.細菌叢非類似性の指標であるWeighted UniFrac dissimilarity index とpH 値のスピアマンの順位相関係数を算出した.結果:13 例の創部が調査された.非類似度指数とpH 値の中央値はそれぞれ0.36(IQR:0.30-0.38)と7.71(IQR:7.61-7.83)だった.非類似度指数と創部pH は有意な正の相関を示した(p=0.75,p<0.01).結論:細菌叢非類似性が高くなると,創部pHも上昇した.この結果はアルカリ性の組織環境は創傷治癒を損ない,またディスバイオシス状態の創部では治癒が遅延する事実と一致する.臨床において創部pH をディスバイオシスの評価に用いるためには,これらの関係を創傷治癒傾向で比較するさらなる研究が必要である.

【キーメッセージ】
1.今回の研究は看護・介護のどのような問題をテーマにしているのか?
 研究を行うきっかけとなったことはどのようなことか?
→創傷治癒遅延を惹起する創部細菌叢の変容を検出できるポイントオブケア技術を確立したいと考えた.

2.この研究成果が看護・介護にどのように貢献できるのか?あるいは,将来的に貢献できることは何か?
→ 将来的に創部細菌叢の評価をケア選択に活用できるようになり,治癒遅延の効果的な予防に寄与する.

3.今後どのような技術が必要になるのか?
→細菌叢変容の検出技術確立のため,細菌叢非類似性と創部pH の関係を治癒傾向で比較する研究が必要である.
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