抄録
本研究では,上肢切断者が関節角度を意図どおりに操作可能な電動義手を開発するために,筋収縮時の筋肉の機械的な変形を捉える皮膚表面上の筋隆起位置を用い,精確かつ簡単に関節角度を推定可能な手法を提案している.本論文では,手関節角度推定における筋隆起位置の有用性検証として,非切断者5名において手関節屈伸動作時の関節角度に対する筋隆起位置の信号特性を明らかにし,手関節角度の推定を行った.その結果,筋隆起位置は手関節角度に対する1次近似により0.94と高い決定係数を示したことから,両者の関係は直線による近似が可能であることが分かった.さらに1次近似により得た関数を用いて手関節角度を推定した結果,全体の手関節角度推定誤差は平均8.05[°]となり,表面筋電位を用いる手法と同程度の推定誤差を得た.この結果を用いて,今後は,上肢切断者において筋隆起位置に基づく手関節角度推定手法を用いた電動義手制御手法を検討する.