抄録
本研究の目的は,末梢静脈穿刺の成否と静脈穿刺関連合併症の発生に影響する目視困難な静脈を可視化する装置の開発に向け,最適な近赤外光波長帯を選択し,狭帯域光法の有効性を検討することである.対象は20歳から39歳の健常成人女性の目視困難静脈とした.近赤外光波長帯を同等の強度で照射するハロゲンランプで目視困難静脈に照射し,近赤外光波長帯に同等の感度をもつハイパースペクトルカメラで撮像した.獲得した700-1100 nm の画像で主観的,客観的に静脈の有無を評価した.静脈ありと判断した近赤外光画像で目視困難な静脈部分と周囲皮膚部分の輝度情報で算出したコントラスト比を光波長ごとに算出した.その結果,可視化率は75.8%で,最適な光波長帯はおおむね950-1000 nm,その光波長帯をピークとして狭波長帯とすると,目視困難な静脈部分と周囲皮膚部分のコントラストが高まることが期待できると分かった.