2006 年 13 巻 1 号 p. 23-30
放射性廃棄物処分の長期的安全性を評価する上で, 地下水の3次元流向・流速は不可欠な情報である. しかし, 深部地下で想定される流速は現存技術の測定下限を下回る可能性があり, 実際の処分場性能を過小評価する事が懸念される. そこで, 筆者らは地下水に浮遊する固体トレーサの移動軌跡を超音波反射波で追跡することによって, これまで測定出来なかった極低流速を含む10-10~10-5m/sの範囲の流向・流速の測定を可能とする計測方法を提案している. しかし, この手法を実環境に適用する上ではターゲットとなる固体トレーサが最低でも2日間浮遊することが必要条件となるので, 粒子の沈降やブラウン運動などの見かけ上の影響を排除し, 安定な浮遊を確保するための具体的なトレーサ作成方法を検討した. その結果, 密度調整が可能な二重構造の有機固体トレーサを開発し, 500m深度のボーリング孔を用いた試験によって目標とする地下水流速を実際に計測することに成功した.