原子力バックエンド研究
Online ISSN : 2186-7135
Print ISSN : 1884-7579
ISSN-L : 1343-4446
研究論文
地質環境条件の空間的不均質性に応じた施設レイアウト等の工学的対策によるシステム全体性能の改善の可能性について
高瀬 博康稲垣 学須山 泰宏
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 13 巻 1 号 p. 13-22

詳細
抄録

 地層処分における多重バリアシステムの眼目とするところは, 人工バリア及び天然バリアの安全機能を組み合わせることによって, 長期的安全性を確保することにある. このため, 処分事業の各段階における調査で明らかとなる地質環境条件に基づき, これに適した処分場概念を構築することが求められるが, この際, 与条件となる天然バリア性能の程度によっては, 人工バリアの安全機能を強化あるいは変更することによって, 多重バリアシステム全体としての性能を確保することが必要になる場合があるものと予想される. ここで, 前提となる地質環境条件が顕著な空間的不均質性を呈する場合が多いにもかかわらず, 従来の検討では, ある代表的な地質環境条件を固定して単一の廃棄物と人工バリアの組についての核種移行解析を実施し, その結果を数万体の廃棄物全体に適用することが普通であった. しかしながら, 地質環境条件に空間的不均質性が含まれている以上, 対象領域の中に, 相対的に「好ましい」部位と「好ましくない」部位とが混在することとなる。このため, 相対的に「好ましい」領域により多くの廃棄体を定置するという意味での処分場レイアウトの最適化を行う具体的な方策を検討すること, そして, このような最適化を図ることによるシステム全体性能の改良の程度を定量化することが重要な課題となる. 本論では, このような観点から, 従来の均質近似のアプローチに代わって, 地質環境条件の空間的不均質性を前提として, より好ましい部位に処分場のレイアウトを展開して多数の廃棄物を定置することにより処分システム全体としての性能の改善を図るというアプローチの基本的な考え方について考察を加えることを試みた.

著者関連情報
© 2006 社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
前の記事 次の記事
feedback
Top