原子力バックエンド研究
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研究論文
硝酸イオン化学的変遷挙動評価モデルの施肥由来硝酸性窒素汚染事例への適用
阿部 徹平野 史生三原 守弘本田 明
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2020 年 27 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

 硝酸イオン化学的変遷挙動評価モデル(NEON)は,地層処分施設およびその周辺における硝酸イオンの化学的変遷挙動を把握するために開発された評価ツールである.硝酸イオンはTRU廃棄物に易溶性の塩として含まれており,放射性物質の移行挙動に影響を及ぼす可能性がある.したがって,地層処分の安全性を評価するための基礎情報として硝酸イオンの化学形態の変化を評価する必要がある.NEONでは硝酸イオンと,金属,鉱物および微生物との反応がモデル化されており,このうち微生物との反応は微生物の活動による窒素循環等の過程を取り入れて構築している.各反応モデルは室内実験の結果と比較され,おおむね再現できることが確認されている.そこで,TRU廃棄物の地層処分を想定したスケールにおけるNEONの適用性を評価することを目的として,地下水の硝酸性窒素汚染の天然事例について再現解析を実施し,モデルの適用性を評価した.再現解析には広島県生口島の事例を取り上げた.NEONを用いて計算された硝酸イオンおよびその化学変遷物であるアンモニウムイオンの濃度分布は,数百メートル規模でおおむね再現しており,NEONの広域的条件における適用性が示された.

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© 2020 一般社団法人日本原子力学会 バックエンド部会
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