炭酸イオン共存系におけるAm(III)の熱力学データを報告した5カ国の6研究機関による7件の研究報告をレビューし、データの妥当性を検討した。Am(III)の1炭酸錯体、AmCO3+については複数の研究グループの見解がかなりよく一致している。しかし高次の錯体については炭酸錯体だけが生成するとする説と、炭酸錯体とヒドロキソ炭酸錯体の両方が生成するとする説の二つが存在する。それぞれの原著をレビューしてこの相違を検討した結果、ある溶解度データは、炭酸錯体だけで説明しようとするとその安定度定数を不当に大きくとらなければならず、むしろヒドロキソ炭酸錯体で説明すべきであることがわかった。また炭酸錯体のみが生成していると説明された溶解度のデータから、ヒドロオキソ炭酸錯体の安定度定数の上限値を見積もったところ、既存の値と全く矛盾しないことがわかった。一方、ある溶媒抽出の研究はヒドロキソ炭酸錯体が生成する可能性の高い条件で行われたにもかかわらず、実験結果はヒドロキソ炭酸錯体を入れないモデルでよく説明できることがわかった。放射性廃棄物の地層処分の安全評価に用いる熱力学データとしては、既存の溶解度データをすべて説明できることを重視し、このレビューはヒドロキソ炭酸錯体もデータベースに取り入れることとし、SITを使ってイオン強度ゼロに外挿した安定度定数を選定した。