放射性廃棄物処分システムの中でセメント系材料は、①廃棄物埋設施設の施設構造材(躯体コンクリート)、②放射性廃棄物を物理的に不動態化する固型化材および③廃棄物固化体と施設の間にある空隙を埋める充填材として使用される。これら処分システムに使用されているセメントは、処分環境を高いアルカリ性に保つことによりTRU核種を含む多くの放射性核種の溶解度を下げ、かつ、吸着・収着等の化学的な現象に基づく核種の移行抑制に寄与している。放射性廃棄物処分システムの安全性が長期にわたって確保されるためには、セメントのアルカリ性に基づく核種の移行抑制機能が長期間維持されることが前提となるが、そのためには処分システムのアルカリ性環境の長期変化を合理的に予測評価する事が必要になる。Atkinsonらは、廃棄物処分システムのpH変化をポルトランドセメント硬化体の主な構成物であるカルシウムシリケート水和物の溶解特性と地下水によるセメント成分の溶出から評価する方法を提案している。
本報告では、Atkinsonらによって提案された処分環境のpH評価手法とその手法の基礎となっているセメント水和物溶解特性研究の現況を紹介する。