2024 年 31 巻 2 号 p. 82-95
高レベル放射性廃棄物の処分地の選定過程における概要調査では,地下水の涵養域から流出域までを包含する数km〜数十kmの広域を対象とした地下水流動解析により,地下水の移行時間・経路が評価されることが想定される.亀裂の発達する岩盤中の地下水の移行時間を解析的に求める上で,岩盤の水理学的有効間隙率は感度の高いパラメータである.堆積岩ではボーリング調査における原位置水理試験から得られた亀裂の透水性を岩盤の透水性として扱う一方で,別の試験方法から得られた健岩部に相当する間隙率を水理学的有効間隙率として扱うなど,有効間隙率の与え方が明確ではない.本研究では低透水性の岩石基質部に亀裂の発達する堆積岩である声問層および稚内層浅部を例として,亀裂の開口幅を基に推定した有効間隙率を用いた場合の移行時間を,ボーリング調査における地下水年代の評価結果と比較することで,有効間隙率の与え方を検討した.その結果,亀裂の開口幅を基に推定した有効間隙率を用いた場合,ボーリング調査から得られた観測結果と整合的な移行時間が得られた.その時の有効間隙率は,健岩部の間隙率と比較して1桁〜3桁小さい値であった.低透水性の岩石基質部に亀裂部からなる水みちネットワークが形成される堆積岩の場合,亀裂の開口幅を基に有効間隙率を推定することが有効であることが示された.