原子力発電所から発生する固体状廃棄物を高周波誘導加熱方式で溶融処理した場合の核種の残存率と溶融体中での分布割合を運転温度,温度保持時間,廃棄物種類等をパラメータとして測定した.試験は,トレーサーを用いた小規模試験,実廃棄物を用いた小規模試験,コールドトレーサーを用いた実規模大試験とした.トレーサーは,廃棄物理設事業の申請対象核種を評価することを念頭において,C-14,Co-60,Ni-63(Ni・59,63の代表),Sr-85(Sr-90の模擬), Nb(コールド),Tc-99,I-131(I-129の模擬),Cs-134,Ce(コールド,α核種の模擬)を用いた.コールド試験では,Co,Ni,Sr,Nb,Re(Tcの模擬),Cs,Ce(α核種の模擬)を用いた.
スケーリングファクタ法を用いて廃棄体中の放射能濃度を評価する上で重要な核種の一つであるCsは,運転温度と温度保持時間の管理で50%以上が溶融体内に残存すること, Coはほぼ全量が溶融体中に残存し,揮発が認められないことと確認した.その他の核種については,C-14,I-131は溶融体中に残存が認められず,Ni,Sr,Nb,Ceでは溶融体中にほぼ全量が残存し揮発は認められなかった.Te,Reでは85~100%が溶融体中に残存した.
また,Co,Ni,Tc,Reは金属層,Cs,Sr,Ce はセラミック層に分布すること,Nbは両方の層に分布すること,各層内で核種は均一に分布することを確認した.