有機農業研究
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【論文】
有機農産物の価格水準と消費者の価格許容力:米国カリフォルニア州と日本の比較を踏まえて
胡 柏
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2020 年 12 巻 1 号 p. 56-70

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抄録
有機農業の拡大を阻む要因の1つに価格問題がよく指摘される.本研究では,米国・加州と日本の比較を通して有機農産物の価格水準,消費者購買力及び価格許容力を明らかにし,消費形成と市場拡大の条件を検討した.理論検討の結果として,①農法転換努力が市場から評価され,生産者価格として報われること(相対価格条件),②稀少資源の生産性変化に比例して取組を調整しまたは価格条件を整えなければならないこと(生産性条件),③慣行農業に劣らない収益性が確保されること(収益条件),④生産の楽しみと消費の喜びが共に達成される生産物価格が形成されること(産消合意形成条件),⑤消費者の支払い意思を減退させず,なおかつ業者の参入に誘因を与えるほどのマージンが形成されること(流通マージン条件)の「有機農業発展の5条件」を導出した.検証分析では,①加州の有機農業者は作物単収の低下幅を大きく上回る価格を得,取組の継続・拡大条件を手にしている点,②有機対慣行品小売価格比は3割程度に収まっている点,③加州の消費者は東京を上回る有機農産物購買力を有し,消費形成が進みやすい環境にある点,④加州の小売業者は慣行品より高いマージンと有機農業者を上回る価格プレミアムを手にしている点を明らかにした.国内有機農業の推進に多大な示唆を与える結果と言える.
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© 2020 日本有機農業学会
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