2021 年 13 巻 2 号 p. 58-67
本研究では,きのこと廃培地飼料の生産両立と廃培地排出量の削減を目指し,廃培地飼料に粗飼料としての物理的効果を付与するため,切断長の異なる原料を含む培地でのエノキタケの栽培成績を調査する(実験1)とともに,その廃培地で調製したサイレージの粗飼料としての物理的効果(実験2)を明らかにした.実験1で用いた切断長の長い原料は,以下のように調製した.すなわち,穀実収穫後のスイートコーン茎葉を13mm(S)と28mm(L)に切断して,保存性付与のために乳酸発酵させた(以下,FCS).このFCSのSとLでエノキタケ培地のコーンコブを段階的に0,25,50,75および100%置換して栽培試験を行った(対照区,S25,L25,S50,L50,S75,L75,S100およびL100区).これら実験培地の中で,栽培成績が良好で,なおかつFCSの切断長が長く,その含量が高いという条件を満たすものはL75区であったことから,この区の廃培地を実験2のサイレージ原料として選択した.実験2では,コーンサイレージならびにエノキタケ生産農家のコーンコブ主体培地由来および上記L75区由来の廃培地から調製したサイレージ(以下,それぞれSMSおよびL75サイレージ)の理化学成分ならびにこれらを給与した緬羊の摂食量および摂食・反芻時間と咀嚼回数を調査した.両廃培地サイレージは,コーンサイレージと比較して,低い乳酸含量とやや高いpHを示したが,両廃培地サイレージ間で色調,臭気および触感に大差はなかった.緬羊における摂食量はコーン,SMSおよびL75サイレージいずれの間でも有意差は認められず,同等であった.摂食と咀嚼の時間および咀嚼回数はコーンサイレージに対してSMSサイレージでは減少したものの,L75サイレージとコーンサイレージまたはSMSサイレージとの間で有意差が認められず,ある程度の粗飼料としての物理的効果を示した.結論として,切断長の長いFCSを含む培地でエノキタケ生産は可能であり,その廃培地サイレージの緬羊による採食量はコーンサイレージの場合と同等であり,ある程度の粗飼料としての物理的効果を持つことが示唆された.