2020年に山形県置賜(おきたま)地域の長井市と庄内地域の鶴岡市において畦畔管理状況を調査した.長井市では80%の畦畔で畦畔除草剤が使用されていた.長井市の調査地区の圃場間傾斜角度は5.5パーミルで,水田1筆面積が狭く,畦畔本数が多いことや畦畔法面の面積が広いことから雑草防除の作業負担が大きいために,除草剤によって軽労化が図られていると考えられた.聞き取り調査の結果でも,除草剤使用の理由として「作業時間の短縮」「労働負荷の軽減」をあげる農業者が多かった.一方で畦畔の崩れを防ぐため,64%の畦畔で畦塗りが行われていた.これに対し鶴岡市では調査した全ての畦畔で除草剤が使用されておらず,草刈りによって雑草管理が行われていた.鶴岡市の調査地区の圃場間傾斜は0.54パーミルと小さく,平坦地であるため,畦畔法面の面積が狭く,また畦畔の数が少ないことから,長井市に比べて雑草管理面積が少ないと考えられた.さらに多くの農業者が自走式草刈り機を導入して,草刈りの作業負担の軽減を図っていることで,草刈による畦畔雑草の管理をより容易にしていると考えらえた.一方で,聞き取り調査の結果では,畦畔雑草の管理に除草剤を使用せずに草刈りによる除草を行う理由として「地域の習慣や風土」「環境を守る」をあげる農業者が多かった.鶴岡市における草刈りによる雑草管理に対する農業者の動機付けについては,今後の検討課題である.