近年,学校給食等の公共調達において有機食材を導入する取り組みが世界各地で広がっており,その実現を推進する政策も展開されている.例えば,ブラジル,アメリカ,韓国,フランス等では,多様な市民運動に後押しされた中央政府および地方政府が,有機食材の公共調達を推進している.本稿は,公共調達の変革を通じて食料システムの持続可能性を高めようとする上記の取り組みを,インタビュー調査および資料調査から明らかにすることを課題とする.結論として,(1)これらの国では現行の食料システムに対する問題意識の共有が,公共調達の変革の原動力になっていたこと,(2)公共調達における有機食材の安定的な調達の仕組みを支援する制度が確立されつつあること,(3)公共調達における有機食材の導入による食材費の値上を避けることは,様々な工夫により可能であること,(4)公共調達のあり方をめぐって政府の役割と自由市場の関係が問われていることを述べる.