水稲有機栽培の雑草防除として,遮光効果が期待できる浮遊植物のアオウキクサとウキクサに注目し,これらによるリビングマルチの有効性を検討した.ウキクサはアオウキクサに比べ遮光率が高く.雑草の発芽を促進する特定の波長域を遮光して,雑草の発生を抑えることが明らかになった.ポット試験によりウキクサマルチの雑草防除効果を検証したところ,難防除とされるコナギを含めた雑草の発芽と生育を抑制することが確認できた.水稲の圃場試験のウキクサマルチでは,日最高水温の上昇が抑えられ,また水稲の幼穂形成期までの平均水温は低くなったが,日最低水温には影響はなかった.湛水層の溶存酸素量,pH,電気伝導度,酸化還元電位には影響を与えないことが明らかとなった.ウキクサマルチでは,コナギを含めた雑草の発生本数,乾物重共に少なかった.ウキクサの分解に伴って生じた窒素は,表層土壌の無機態窒素濃度を高め,これらの窒素が水稲の生育と収量の向上に寄与している可能性が示された.以上の結果より,ウキクサによるリビングマルチは,雑草防除が課題とされる水稲の有機栽培で用いることが出来る有効な技術になり得る.