生態学に立脚した総合的有害生物管理(IPM)は,半世紀以上にわたり,人や環境に対する負荷を軽減する作物生産技術の開発に貢献してきた.IPM の取り組みで蓄積されてきた知識と経験は,有機農業における害虫管理技術の改善に活用できる.しかし,有機農業では合成農薬が使えないため,臨機防除の手段に乏しい.したがって,害虫の発生を予防する農生態系の構築が有機農業ではきわめて重要である.その伴を握るのは時間的・空間的な植生管理である.植生管理戦略の設計では,害虫の侵入,定着,生存,繁殖の抑制と,天敵の保護増強法の改善が焦点の課題となる.有機農業における害虫管理技術の体系化においては,分野の境界を超えた共同研究が望ましい.また,技術を選び使うのは農家であることを踏まえて農家による害虫管理技術の選択に役立つ情報をできるだけ多く提供する努力が求められる.