日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
掌蹠の小陥凹の観察にダーモスコピーが有用であった母斑性基底細胞癌症候群の2例
佐々木 優吉田 哲也矢野 優美子山本 紗規子白石 淳一佐藤 友隆
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2015 年 32 巻 2 号 p. 187-192

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抄録

症例1:70歳男.初診7年前に当科で左胸部,左背部の基底細胞癌に対して手術を施行した.左頭頂部黒色斑を主訴に当科を受診し,同部位には径8mm大の黒色斑をみとめた.ダーモスコピーでは多発青灰色小球や樹枝状血管拡張がみられ,皮膚生検では基底細胞癌の所見であった.多発する基底細胞癌から母斑基底細胞癌症候群を疑い両側の手掌と足底を観察したところ2~3mm大の小陥凹の多発をみとめ,ダーモスコピーでは不整形で境界明瞭な淡赤色の陥凹性病変がみられ, 病変内には皮溝に沿って平行に配列する紅色小球を認めた.病理組織は角層が菲薄化し,表皮突起は不規則に軽度延長し,表皮内と真皮上層の血管周囲に軽度のリンパ球浸潤がみられた.さらに患者背景の確認を行ったところ,歯科口腔外科での角化嚢胞性歯原性腫瘍の手術歴,顎骨嚢胞の家族歴があり,頭部単純CT検査で大脳鎌石灰化の所見をみとめ,母斑性基底細胞癌症候群(NBCCS)の診断に至った. 症例2:60歳男.30歳頃から両手掌と足底の小陥凹の多発と,繰り返す顎嚢胞を認め,前医でNBCCSの診断となった.初診10年前から左下腿と右下腹部に皮疹が出現し当科受診した.左下腿と右腹部から皮膚生検を施行したところ基底細胞癌の所見であった.手掌の小陥凹は1mm大であり,ダーモスコピーでは淡赤色の小陥凹内に紅色小球の配列がみられた.病理組織学的には真皮乳頭層毛細血管周囲に軽度の炎症細胞浸潤の所見がみられた. 多発する基底細胞癌を見た際にはNBCCSを鑑別に挙げ,ダーモスコピーを用いて手掌や足底の小陥凹の有無の観察を積極的に行うべきと考える.

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