日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
放射線治療後に早期に再発及びリンパ節転移を認めた乳房外Paget病の1例
川北 梨乃吉田 哲也齊藤 優子佐々木 優山下 博伊東 良晃萬 篤憲白石 淳一福田 知雄
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2017 年 34 巻 3 号 p. 349-354

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抄録

 77歳女.既往に気管支喘息,慢性閉塞性呼吸障害あり.左外陰部の瘙痒を伴う紅斑,硬結を主訴に当科を受診した.生検組織で,汗腺癌との鑑別を要する腫瘍細胞の真皮全層への浸潤像が認められたが,免疫組織化学的所見GCDFP15+/CK20—および組織中に断頭分泌を示す所見を認めなかったことより,乳房外Paget病の可能性がより高いと考えた.患者が手術を希望せず,合併症も考慮し,放射線治療を選択した.放射線照射後,紅斑と硬結は消失し,臨床的には一旦寛解したが,治療終了7ヶ月後には局所再発を認め,その後の精査で左鼠径部リンパ節にも転移が確認された.患者および家族と十分に相談し,今回は手術を選択した.手術侵襲を出来るだけ少なくするため,ラジオアイソトープを用いたセンチネルリンパ節の局在確認を術前に行い,鼠径リンパ節郭清はセンチネルリンパ節が確認された左側のみとした.術後の画像検査で転移リンパ節の残存が一部疑われたため,同部位に放射線の追加照射を行った.  一般に乳房外Paget病は水平方向に浸潤していく事が多いが,自験例のような垂直に浸潤するタイプの乳房外Paget病では,腫瘍細胞の浸潤が非常に速い速度で進むため,より注意深く再発や転移の有無を観察する必要があると考える.自験例では,術前のラジオアイソトープを用いたセンチネルリンパ節シンチグラフィが術式を決めるのに,また,術中のラジオアイソトープの取り込み部位を確認するガンマプローブ使用がリンパ節郭清に有用であった.

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