日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
顔面の尋常性痤瘡治療における外用・内服抗菌薬の処方に関する医師へのアンケート及びカルテ情報を基にした実態調査
林 伸和 
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2020 年 37 巻 3 号 p. 424-433

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抄録

 近年,抗菌薬の継続使用による耐性菌出現が問題となっており,尋常性痤瘡治療においても抗菌薬の適正使用を推進する必要性が高まっている.本研究では,痤瘡治療に精通している皮膚科医師18名の協力のもと,顔面の尋常性痤瘡治療における抗菌薬の使用に関するアンケート調査及び外用・内服抗菌薬の処方に関するカルテ調査を行った.アンケート調査の結果,外用抗菌薬の使用期間の目安として,1~3ヵ月程度と回答した医師が計15名,内服抗菌薬の使用期間の目安として,2週間以内あるいは1ヵ月程度と回答した医師が計8名,2~3ヵ月程度と回答した医師が計8名であった.一方,尋常性痤瘡の治療のために3ヵ月を超えて抗菌薬を処方している患者がいると回答した医師は,外用抗菌薬で16名,内服抗菌薬で11名であった.3ヵ月を超えて抗菌薬を処方する理由として,外用抗菌薬は「患者の強い希望があるため」,内服抗菌薬は 「重症で改善が不十分なため」との回答が最も多かった.カルテ調査の結果,初診時に抗菌薬が処方された症例のうち,外用抗菌薬の継続期間が90日以内の症例は集計対象の81症例中61例(75.3%),内服抗菌薬の継続が90日以内であった症例は82症例中78例(95.1%)であった.初診から最終観察日までの期間に維持療法に移行できていた症例は,外用抗菌薬の継続期間が90日以内の61症例中35例(57.4%),内服抗菌薬の継続が90日以内の78症例中44例(56.4%)であった.本研究の結果より,痤瘡治療に精通した医師においては,抗菌薬の継続使用が避けられない患者が一部存在するも,抗菌薬を中止可能であった症例の過半数が維持療法に移行できており,抗菌薬の適正使用を意識した痤瘡治療が行われていることが示された.

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