日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
中等症から重症の日本人成人アトピー性皮膚炎患者におけるトラロキヌマブの単独療法およびステロイド外用薬併用療法の有効性と安全性の検討
加藤 則人佐伯 秀久津田 雄一郎大槻 マミ太郎
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2023 年 40 巻 1 号 p. 59-73

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抄録

アトピー性皮膚炎(AD)の発症や病態形成に関与する2型サイトカインのIL-13に対し,トラロキヌマブ(tralokinumab)は特異的に結合し,IL-13を介したシグナル伝達を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体製剤である.海外の複数国で中等症から重症のAD治療薬として承認されている. 今回,中等症から重症の成人AD患者を対象としたトラロキヌマブ単独療法の国際共同臨床試験ECZTRA1の日本人集団の結果と,ステロイド外用薬(TCS)との併用療法の国際共同臨床試験ECZTRA3と同様の試験デザインで行った日本人を対象とした臨床試験ECZTRA8の結果より有効性と安全性を検討した. 日本人成人AD患者におけるトラロキヌマブ単独療法およびTCS併用療法は,国際共同臨床試験結果に類似した良好な安全性を示した.日本人患者ではベースライン時の疾患重症度,救援療法の頻度,加えてECZTRA8でTCS使用量がいずれも高い傾向があり,国際共同臨床試験と一概に類似した結果とはいえないが,本剤投与による有効性を示した.また,ECZTRA1では68週までの長期治療における忍容性も確認できた.本結果から,トラロキヌマブは,中等症から重症の日本人成人AD患者に対する有用な治療選択肢になると考えられる.

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