日本臨床皮膚科医会雑誌
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40 巻, 1 号
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論文
  • 貝阿弥 瞳, 平田 央, 鶴田 大輔
    2023 年 40 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー
    55歳,女性.初診2年前より外陰部に瘙痒があり,2ヵ月前から外陰部,肛囲に腫瘤を自覚していた.近医で尖圭コンジローマと診断されイミキモドを外用するも改善せず,当科を紹介受診した.初診時は,外陰部から肛囲にかけて鶏冠状に隆起した灰白色の腫瘤を多数認め,肛門部腫瘤は9.5 × 3 cm大であった.有棘細胞癌を鑑別疾患として,肛門部腫瘤より皮膚生検を施行した.病理組織学的所見では,表皮は過角化を伴って外方性,乳頭腫状に肥厚していた.錯角化があり,表皮上層の角化細胞にコイロサイトーシスを認めた.核の異型性は乏しく,悪性を示唆する所見はなかった.臨床所見,病理組織学的所見から巨大尖圭コンジローマ(giant condyloma acuminatum, GCA)と診断した.腫瘤の縮小を目的に亜鉛華デンプン外用を開始したところ,開始から2ヶ月で腫瘤はすべて消退した.その後,通院しなくなり,再発については確認できていない.  GCAとはカリフラワー状の腫瘤を形成し,外見上は悪性腫瘍が示唆されるが,病理組織学的に良性を示す腫瘍性病変と定義されている.治療として外科的切除術が最も確実な治療法と考えられているが,外科的切除術後でも再発率は50%と高い.2010年にGCAに対して亜鉛華デンプンによる治療が有効であった2例が報告された.腫瘍サイズが大きいまま外科的に治療した場合,皮膚欠損範囲が大きく,治癒に時間を要する.まず亜鉛華デンプン外用で腫瘍の縮小を目指すことで,治療侵襲性を小さく出来る可能性がある.また,自験例のように完全消退する可能性もある.
  • 瀬川 郁雄
    2023 年 40 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー
    ホスラブコナゾールを投与し,5ヶ月以上経過を観察し得た患者106例について有効性と安全性を検討した.臨床写真から混濁比を求め経時的に観察したところ,混濁比9と10の症例は投与開始時に89%だが,4週後に55%,8週後に26%と急速に減少している.混濁比5以下の症例は4週後から見られるようになり,12週後に28%,4ヶ月後に45%,5ヶ月後に62%と増加している.1年後の完全治癒率は67%だった.全異栄養性爪真菌症(以下,TDO)を含む群と含まない群を比較すると,TDOを含まない群の改善傾向が良く,TDOが難治であることを示した.TDOに対し爪切りを併用すると,改善傾向が増した.5ヶ月以上経過を観察することにより,再燃例を認めた.再燃例は,遠位側縁爪甲下爪真菌症(以下,DLSO)からDLSO,TDOあるいは表在性白色爪真菌症(以下,SWO)からSWO,DermatophytomaからDermatophytomaを生ずる4つのパターンが見られた.DLSOからDLSOを再燃した症例では,ある程度改善した後に,押し戻されるように再燃していた.それらの症例は爪甲が下床から離れており,爪床からの薬剤の侵入がないためにその部の白癬菌が生き残り再燃した可能性を考えた.肝機能障害は26.4%に見られたが,γ-GTの異常が半数で,投与を終了できなかったのは2例のみだった.肝機能障害の発症は投与開始6週間以降に多く,6週以降も定期的に検査を行う必要がある.
  • 原田 和俊, 橋本 貴, 深山 浩
    2023 年 40 巻 1 号 p. 44-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー
    背景:日本では爪白癬に保険適用を有する薬剤の選択肢が増え,皮膚真菌症診療ガイドラインも2019年に改訂されており,爪白癬の治療実態の変化が想定される. 目的:最新の爪白癬の薬物治療実態を調査する. 方法:全国の皮膚科医のうち,過去1ヵ月以内に爪白癬患者に対して10人以上薬物治療を実施した医師を対象として,インターネットアンケート調査を実施した. 結果:調査対象となった医師336人が過去1ヵ月以内に薬物治療を実施した爪白癬患者数は平均42.1人であり,病型の内訳は,遠位側縁爪甲下爪真菌症(distal and lateral subungual onychomycosis: DLSO)が56.2%と最も高く,全異栄養性爪真菌症(total dystrophic onychomycosis: TDO)が17.2%,楔形が11.1%,表在性白色爪真菌症(superficial white onychomycosis: SWO)が9.0%,近位爪甲下爪真菌症(proximal subungual onychomycosis: PSO)が5.8%であった.各薬剤の処方割合は,爪白癬に保険適用を有する外用薬(爪白癬外用薬)が60.0%,経口薬が35.7%,その他が4.3%であった.病型別での第一選択薬は,DLSO軽度,楔形,SWOではそれぞれ69.3%,56.8%,69.0%の医師が爪白癬外用薬とし,DLSO重度,PSO,TDOではそれぞれ80.1%,62.8%,73.5%の医師が経口薬とした.DLSO中等度では54.5%の医師が経口薬,44.3%の医師が爪白癬外用薬として約半数ずつに分かれた.患者背景別での第一選択薬は,75歳以上の患者,他疾患で経口薬を多剤服用している患者,肝機能障害の患者では,それぞれ61.9%,73.2%,89.6%の医師が爪白癬外用薬とし,足白癬を合併している患者,罹患爪が3枚以上の患者ではそれぞれ58.3%,69.3%の医師が経口薬とした. 結論:日本では爪白癬に保険適用を有する薬剤が経口薬3剤,外用薬2剤と薬剤選択肢が多い.爪白癬の薬物治療実態として,爪白癬の病型,患者の年齢,基礎疾患などを考慮した薬剤選択がされていると考えられた.
  • 野口 博光, 久保 正英, 井上 雄二, 福島 聡, 矢口 均
    2023 年 40 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー
    われわれはダーモカメラを用いたオンライン再診を行いグループホームで発生した疥癬の集団感染を終息させた.初診時に往診した入居者は女性6名,年齢94.3 ± 6.5歳の認知症を伴う高齢者であった.全例に搔破行動と搔破痕を認め,3例(50.0%)は略全身に皮疹があった.診断結果は,ダーモスコピーによる疥癬の確定診断3名,好発部位の典型的な皮疹と特徴的な病歴による臨床診断2例,非典型的な皮疹と特徴的な病歴による感染疑い1例で,日本皮膚科学会の疥癬診療ガイドライン(第3版)に準拠して全症例にイベルメクチン200 µg/kgを投与した.ダーモカメラを用いたオンライン再診を週1回合計4回行った.ダーモカメラの接写モードで疥癬虫のダーモスコピー像を,通常モードで丘疹や搔破痕などの皮疹を観察した.オンライン診療は医師と施設の介護士に付き添われた患者との間で行うD to P with Hの形態をとった.治癒に要したイベルメクチンの内服回数は2.7 ± 0.5回で,全患者の内服終了1ヶ月後の初診8週後に感染の終息を確認した.通院が困難な場合など患者環境によってはダーモカメラを用いたオンライン診療は有用であると考えた.
  • 加藤 則人, 佐伯 秀久, 津田 雄一郎, 大槻 マミ太郎
    2023 年 40 巻 1 号 p. 59-73
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/08
    ジャーナル フリー
    アトピー性皮膚炎(AD)の発症や病態形成に関与する2型サイトカインのIL-13に対し,トラロキヌマブ(tralokinumab)は特異的に結合し,IL-13を介したシグナル伝達を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体製剤である.海外の複数国で中等症から重症のAD治療薬として承認されている. 今回,中等症から重症の成人AD患者を対象としたトラロキヌマブ単独療法の国際共同臨床試験ECZTRA1の日本人集団の結果と,ステロイド外用薬(TCS)との併用療法の国際共同臨床試験ECZTRA3と同様の試験デザインで行った日本人を対象とした臨床試験ECZTRA8の結果より有効性と安全性を検討した. 日本人成人AD患者におけるトラロキヌマブ単独療法およびTCS併用療法は,国際共同臨床試験結果に類似した良好な安全性を示した.日本人患者ではベースライン時の疾患重症度,救援療法の頻度,加えてECZTRA8でTCS使用量がいずれも高い傾向があり,国際共同臨床試験と一概に類似した結果とはいえないが,本剤投与による有効性を示した.また,ECZTRA1では68週までの長期治療における忍容性も確認できた.本結果から,トラロキヌマブは,中等症から重症の日本人成人AD患者に対する有用な治療選択肢になると考えられる.
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