日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
慢性蕁麻疹におけるshared decision makingに基づく第二世代抗ヒスタミン薬の併用の有用性
菅井 順一
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2024 年 41 巻 1 号 p. 60-

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抄録

皮膚科診療においては痒みを伴う皮膚疾患が多く認められる.この際に抗ヒスタミン薬を使用される場合が多いが,第二世代抗ヒスタミン薬の1剤の内服では,必ずしも速やかに改善するとは言えず,治療に苦労する場合も認められる.このような場合に内服薬の併用を検討することになるが,この時には効果と副作用のバランスを考慮することが重要となる.  一方では2018年に蕁麻疹診療のガイドラインが改定となり,第二世代抗ヒスタミン薬の併用が推奨されるようになった.しかしながら第二世代抗ヒスタミン薬併用の有効性と副作用に関する報告はされていない.そこで,今回栃木県では2019年12月より慢性蕁麻疹に対して第二世代抗ヒスタミン薬の併用が保険診療上認められたことから,第二世代抗ヒスタミン薬の併用による効果と安全性について検討した.  方法として,対象は当院に通院中の慢性蕁麻疹の症例で十分な効果が得られていない症例,もしくは効果を認めているが第一世代抗ヒスタミンもしくは鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬の併用をしている症例とした.検討を行う基本的な方向付けにはSDM(shared decision making)を用いた.つまり,ただ単に医師が2種類の第二世代抗ヒスタミン薬を併用することを決断するのではなく,患者側の意見を傾聴し治療の方向性を出していくこととした.この結果,23名中第二世代抗ヒスタミン薬の併用では73.9%で改善が認められた.なお今回の23例と極めて限定された解析の中では,眠気の発現は0.0%であった.また,2016年から登場したビラスチン(ビラノア®),デスロラタジン(デザレックス®),ルパタジン(ルパフィン®)は利便性が高く,いずれかが全例に選択されていた.以上より,このことから第二世代抗ヒスタミン薬の併用は効果と安全性が認められ,有用な治療であることが示された.

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