日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
棘刺創部に生じ,限局性リンパ管腫様の臨床像を呈したintralymphatic histiocytosisの1例
村尾 和俊宇都宮 正裕久保 宜明
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2024 年 41 巻 1 号 p. 55-

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抄録

83歳,女性.約2か月前に右5指にすだちの棘が刺さった.その後,同部に褐色の局面を生じてきた.初診時,右5指背側に表面が乳頭腫状を呈する淡褐色局面を認めた.生検組織では真皮に拡張した脈管が多数見られ,内部に単核球の集塊を伴う脈管も認めた.拡張した脈管はD2-40陽性で,集簇する単核球はCD68陽性であった.皮膚の組織培養では真菌などは検出されなかった.以上より本例をintralymphatic histiocytosis(IH)と診断した.特に治療は行わずに経過を見たが,初診後7か月の時点で局面に大きな変化はないものの,右5指全体にリンパ浮腫が生じていた.IHは慢性関節リウマチとの関連がよく知られているが,そのほかにも人工関節置換術や感染症,悪性腫瘍,外傷などに伴って生じた例が報告されている.自験例ではすだちの棘刺入が誘因となったと考えられるが,調べ得た限りではこれまでに同様の症例報告は見つからなかった.

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