抄録
ホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物 (ネイリン®カプセル) (以下ホスラブコナゾール) による腎機能障害は稀とされている.当クリニックで,2020年6月から2022年3月までに,爪白癬に対してホスラブコナゾールを12週間内服した30症例の血清クレアチニン値 (以下s-Cr) を4週間ごとに検討した.s-Crは内服開始時と比較し,4週後の全例,8週後の1例以外,12週後の3例以外で上昇し,いずれの週も開始時に比べ有意に高値であった (p<0.001) .s-Crの変化量は,4週後で平均0.1 mg/dLの上昇があり,8週後,12週後も同様の値で推移した.一方,推算糸球体濾過量 (以下eGFR) も,同様な結果であり,4週後の変化量で平均 8.4 mL/min/1.73 m2の低下であった.1例のみシスタチンCによる腎機能評価を行い,やはり腎機能は低下していた.4週後のeGFR変化量・率と年齢・性別に相関はなく,性差も認めなかった.しかし4週後のeGFR変化量のみ,内服開始時の腎機能(eGFR)と有意な相関を認めた (p<0.005) .内服終了から12週間後に追加内服した5症例について初回内服終了時と追加内服開始時の腎機能を比較したところ,無治療期間で有意な改善を認め (p<0.05),追加内服開始時の腎機能は初回内服開始時まで改善していた.
ホスラブコナゾールによる腎機能障害は,年齢や性別と関連なく生じ,内服終了後,無治療で腎機能が回復している点から,詳細な機序は不明であるが,一過性,かつ,可逆性の変化と考えられた.本剤使用中にs-Crが上がっても,慎重に経過を観察することで12週間の治療は可能である.