抄録
日本紅斑熱は,Rickettsia japonica (R. japonica)を保有するマダニを媒介としたリケッチア感染症である.西日本における発症が多いが,温暖化などによるマダニの活動域の拡大に伴い,感染例の報告は全国的に増加傾向である1〜3).2020年4月から2024年11月までに,当院では,日本紅斑熱症例18例の診断・治療を経験した.これら18例を集計してみると,従来から3主徴とされている,発熱,刺し口,皮疹以外にも,下痢などの消化器症状が皮疹に先行し,皮膚科受診のタイミングが遅れることがあり,治療の遅れが播種状血管内凝固症候群(DIC)など生命を脅かす状態を引き起こすこと,掌蹠の皮疹が診断の補助になること,リンパ浮腫がある患肢に皮疹が多く生じること,病理組織学的には刺し口,皮疹部いずれにおいても微小血栓を形成しやすいこと,また,マダニに吸着されてから発症するまでの潜伏期が従来いわれているよりも長い可能性があることなど,いくつかの新たな知見が得られた.本論文では,18例の集計結果を示すとともに,以上のポイントについての考察を加える.