日本臨床皮膚科医会雑誌
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論文
瘙痒の強いアトピー性皮膚炎に対しネモリズマブで治療した10例の検討
大草 康正福田 知雄
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2025 年 42 巻 4 号 p. 574-583

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抄録
 当院でネモリズマブ(抗IL-31受容体抗体)による治療をしたアトピー性皮膚炎10例の特徴と経過を報告する.患者は男9例,女1例で,年齢24〜76歳(平均54.3歳),EASIは0.6〜24.6(平均15.3),瘙痒NRS 5〜10(平均6.8),生物学的製剤(以下Bio),JAK阻害薬(以下JAK)使用歴あり5例,なし5例であった.5例のスイッチ例の内4例がデュピルマブからのスイッチであった.10例中3例が途中でネモリズマブ中止となった.  EASIの改善は緩徐ではあったが,10例全例で1回目の投与後に瘙痒NRSの低下を認め,24週時までに継続7例中6例が瘙痒NRS 0〜1を達成した.IgEに関しては多くの症例で有意な変動は見られず,TARCに関しては2例で安定した低下を認めたが他8例は上昇や低下を繰り返す結果であった.デュピルマブからのスイッチ群は4例中3例が1回目の投与後に瘙痒NRS 0 になり,残りの1例も2回目の投与後には瘙痒NRS 0 となった.その他6例と比較しデュピルマブからのスイッチ群は比較的早期に瘙痒が改善した.Bio,JAKが7種類使用できる現状,スイッチが有効となる可能性があり,ネモリズマブは,ステロイド外用にて皮膚症状が中等度程度までコントロールできる瘙痒の強い症例において効果が高く,特にデュピルマブからのスイッチが瘙痒に対してより有効であった.治療効果判定としてはIgE,TARCはEASIや瘙痒NRSの改善率に連動しない可能性が高いため,EASIや瘙痒NRS等の臨床評価ツールを優先的に使うことが望ましいと考えた.
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