2020 年 50 巻 3 号 p. 101-107
いかなる疾患・現象においても,あるバイオマーカーが単なる関連か・真のcausal factor か?,これは極めて重要な問いである.メンデルランダム化解析とは,自然界で行われている無作為化(対立形質が無作為に遺伝する:対立形質の無作為化割付が「神様」により為される)を利用した解析法であり,観察試験においても交絡因子を除外し,因果関係を明らかにすることができるようになった.希少変異に加えて高頻度遺伝子多型を用いたこのようなメンデルランダム化解析結果からは一貫してLDL-C と冠動脈疾患リスクとの強い相関が示され,ランダム化比較試験によるいわゆる臨床エビデンスをさらに強固なものとしている.一方で中性脂肪に関しても希少変異から高頻度遺伝子多型に至るまでにメンデルランダム化研究からは,冠動脈疾患に対してはLDL-C と同じベクトルにあり,真のcausal factor であることが強く推察された.
また,冠動脈疾患患者に対するスタチンを用いたLDL-C 低下療法が広く行われる中で,いわゆる残余リスクに関する研究も成熟期を迎え,日本人における糖尿病患者に対する現代的なスタチンを用いた大規模前向きランダム化比較試験のサブ解析からは,中性脂肪は日本人においてもスタチン時代の残余リスクであることが明確となった.LDL-C とともに中性脂肪に関しても積極的にケアされることを期待したい.