日本臨床生理学会雑誌
Online ISSN : 2435-1695
Print ISSN : 0286-7052
原著
働き盛り世代における高尿酸血症の実態と心血管リスク第1 報
:高尿酸血症の頻度,治療状況および他の心血管リスク因子との関連性
加藤 貴雄加藤 和代生沼 幸子佐藤 恭子西村 芳子伊藤 紳晃今井 夏実川村 梨穂斎藤 幸恵鬼木 貴子佐藤 美恵千島 功子加藤 賢
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 53 巻 2 号 p. 53-60

詳細
抄録

 背景:働き盛り世代における高尿酸血症は,食生活の欧米化に伴って病態が大きく変化していると考えられる.

 対象と方法:2020 年度の定期健康診断にて血清尿酸値が測定された東武鉄道株式会社社員4544 例を対象として,職種別,治療の有無別に高尿酸血症の実態を調査し,年齢,BMI,血圧値,HbA1c 値,LDL-C 値,eGFR 値など他の心血管リスク因子との関連性について解析した.

 結果:(1)平均尿酸値は5.9 ± 1.2 mg/dL,年代ごとの差はなかった.高尿酸者(> 7.0 mg/dL)はいずれの職種でもほぼ19%前後で差はなかったが,高度高尿酸者(≧ 8.0 mg/dL)は乗務員(4.9%)でエンジニア(3.0%)より有意に高率であった(p < 0.05).(2)未治療高尿酸群では尿酸値正常群よりeGFR が有意に低かった(p < 0.001).また未治療群では尿酸値とBMI の間にr=0.23 の有意の正相関,尿酸値とeGFR の間にr=-0.24 の有意の負の相関が見られたが,治療中群ではこれらの相関関係はなく,職種による違いもなかった.(3)併存疾患に関しては,未治療高尿酸群で糖尿病の合併頻度が有意に低かった以外は,各種病態に関して尿酸値のレベルごとの併存頻度に差はなかった.一方高尿酸に対する治療を行っている群では,高血圧症,脂質異常症,慢性腎臓病,肝機能障害などの併存頻度が有意に高かった.(4)ロジスティック回帰分析の単変量解析では高尿酸に対して肥満,高血圧,脂質異常,慢性腎臓病のオッズ比が高かったが,多変量解析では高血圧と慢性腎臓病のみが独立した危険因子であった.

 結論:高尿酸血症は他の心血管リスク因子と密接な関連があり,職種や治療の影響を受けていた.本研究の成績を踏まえた従業員の健康増進施策が急務である.

著者関連情報
© 2023 日本臨床生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top