日本臨床生理学会雑誌
Online ISSN : 2435-1695
Print ISSN : 0286-7052
原著
働き盛り世代における高尿酸血症の実態と心血管リスク
第2 報:高尿酸血症の発症過程,推移と治療効果
加藤 貴雄加藤 和代生沼 幸子佐藤 恭子西村 芳子伊藤 紳晃今井 夏実川村 梨穂斎藤 幸恵鬼木 貴子佐藤 美恵千島 功子加藤 賢
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2023 年 53 巻 5 号 p. 125-131

詳細
抄録

 背景:働き盛り世代における高尿酸血症の発症過程には不明な点が少なくない.

 対象と方法:①東武鉄道株式会社社員のうち2010 年度の尿酸値が未治療で正常かつ2010 年から2020 年までの定期健康診断データが比較可能であった2813 例(高尿酸発症関連因子解析群),② 2010 年度,2020 年度とも7.0 mg/dL 以上の322 例(高尿酸持続群),③ 2010 年度7.0 mg/dL 以上かつ2020 年度正常の432 例(高尿酸改善群),の3 コホートを用い,各種心血管リスク指標値の推移ならびに相互の関連性を検討した.

 結果:(1)2020 年度尿酸治療中または未治療高尿酸血症をエンドポイントとすると,多変量解析にて10 年前の「肥満」,「高血圧」,「慢性腎臓病」のオッズ比が有意に高く,「糖尿病」のオッズ比が有意に低かった.(2)高尿酸持続群ではeGFR が有意に低下していた.(3)改善群ではeGFR の低下はなく,血圧およびLDL-C が有意に低下していた.

 結論: 高尿酸血症の発症・進展過程を分析した結果,高尿酸血症の発症およびその持続が慢性腎臓病に結び付くこと,肥満や高血圧と関連があること,高尿酸血症に対する早期の治療介入によってこれら生活習慣病関連因子の増悪を防止できる可能性があることが明らかになった.

著者関連情報
© 2023 日本臨床生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top