日本臨床生理学会雑誌
Online ISSN : 2435-1695
Print ISSN : 0286-7052
総説
心力学理論で紐解く左室心筋特性に対する心臓リハビリテーションの効果
稗田 道成
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 54 巻 1 号 p. 21-35

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抄録

 HFpEF (heart failure with preserved ejection fraction)は,左室駆出率が正常もしくは保持されているものの,左室拡張機能低下を有する心不全である.HFpEF は,心不全患者の約半数を占めており,加齢,女性,高血圧,左室肥大などの複数の発症要因からなる.HFpEF の生命予後は,左室駆出率が低下したHFrEF (heart failure with reduced ejection fraction)と同様に不良である.

 HFpEF の確立した治療法としてSGLT2 阻害薬の効果が海外の大規模臨床研究で,明らかにされてきているが,今でもHFpEF の予防法や治療法の確立は重要な課題である.心不全に対する運動療法は,左室拡張能を改善させ,生命予後改善効果が実証されている.特に,運動療法は,左室拡張機能を改善させると考えられている.Pressure-Volume Loop 理論を基に,左室拡張末期圧容量関係を侵襲的に求めることで,心筋stiffness を直接算出することができる.本総説では,日本臨床生理学会総会で発表した内容を発展させて,心力学理論を用いて心臓リハビリテーションの左室拡張能に及ぼす効果について概説する.

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