日本臨床生理学会雑誌
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Print ISSN : 0286-7052
総説
電気的心臓内非同期を視野に入れた心臓再同期療法戦略
小鹿野 道雄岩崎 雄樹田邊 潤浅井 邦也
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 54 巻 2 号 p. 53-59

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抄録

 心臓再同期療法(CRT)は心臓内非同期を合併する症候性慢性心不全患者に対する確立された治療である.CRT は心不全治療の一つであることから治療効果判定に様々な心不全改善指標が用いられることが多い.しかし,心不全は多因子が関与し心臓機能障害を引き起こす疾患であるためCRT が是正できる心不全増悪因子について認識することが大切である.CRT が対象とする心不全増悪因子は心臓内非同期である.そして心臓内非同期は電気的心臓内非同期と機械的心臓内非同期に区別できるが,CRT が直接的に改善するのは電気的心臓内非同期のみである.機械的心臓内非同期は電気的心臓内非同期を改善した結果,間接的に改善する指標である.そのため,CRT の適応には心臓超音波検査指標ではなく心電図指標を用いることがガイドラインで推奨されている.

 電気的心臓内非同期を指標としてCRT 適応を考えると,現在ガイドラインで推奨されている左脚ブロック以外の電気的心臓内非同期を有する心不全患者でもCRT の適応を検討することができる.左室の最遅延伝導部位を同定し,同部位に左室リードを留置,さらに適切なプログラミングをすることでCRT の適応は大きく広がる可能性がある.

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