日本臨床生理学会雑誌
Online ISSN : 2435-1695
Print ISSN : 0286-7052
54 巻, 2 号
日本臨床生理学会雑誌
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 小鹿野 道雄, 岩崎 雄樹, 田邊 潤, 浅井 邦也
    2024 年54 巻2 号 p. 53-59
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル オープンアクセス

     心臓再同期療法(CRT)は心臓内非同期を合併する症候性慢性心不全患者に対する確立された治療である.CRT は心不全治療の一つであることから治療効果判定に様々な心不全改善指標が用いられることが多い.しかし,心不全は多因子が関与し心臓機能障害を引き起こす疾患であるためCRT が是正できる心不全増悪因子について認識することが大切である.CRT が対象とする心不全増悪因子は心臓内非同期である.そして心臓内非同期は電気的心臓内非同期と機械的心臓内非同期に区別できるが,CRT が直接的に改善するのは電気的心臓内非同期のみである.機械的心臓内非同期は電気的心臓内非同期を改善した結果,間接的に改善する指標である.そのため,CRT の適応には心臓超音波検査指標ではなく心電図指標を用いることがガイドラインで推奨されている.

     電気的心臓内非同期を指標としてCRT 適応を考えると,現在ガイドラインで推奨されている左脚ブロック以外の電気的心臓内非同期を有する心不全患者でもCRT の適応を検討することができる.左室の最遅延伝導部位を同定し,同部位に左室リードを留置,さらに適切なプログラミングをすることでCRT の適応は大きく広がる可能性がある.

  • 種本 雅之
    2024 年54 巻2 号 p. 61-70
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル オープンアクセス
  • 塩谷 隆信, 加賀屋 勇気, 照井 佳乃, 大倉 和貴, 川越 厚良
    2024 年54 巻2 号 p. 71-81
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル オープンアクセス

     近年,呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)は,その科学的エビデンスが確立されるとともに,新しい知見が相次いで報告されてきている.呼吸リハのプログラムの中では,患者教育の中で特にセルフマネージメント(自己管理)と行動変容が重要視されるようになっている.最近のスマートフォンやタブレット,パーソナルコンピューターなどの情報機器および情報通信技術の進歩に伴い,医療の分野ではオンライン診療や遠隔医療が拡大し,これとともに遠隔リハビリテーションも普及してきている.

     さらに,行動変容プログラムを治療プログラムに取り入れると,薬物療法による運動耐容能の改善効果が大きくなることが多施設における無作為臨床研究において報告されている.また,呼吸リハプログラムに呼吸筋トレーニング(IMT)を併用することで歩数,身体活動量が改善する報告が増えている. 最新のCochrane Library(2023)のsystematic review では,COPDにおいて呼吸リハにIMT を併用すると呼吸筋低下群においても非低下群においても最大吸気圧(MIP)が有意に増加すると報告されている.

  • 佐藤 輝英
    2024 年54 巻2 号 p. 83-87
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル オープンアクセス

     人類が宇宙に滞在する際に, 様々な医学的問題がある.これまでも, 医学的問題によりミッションに影響が出るということもあった. 将来, 長期間宇宙に滞在する際や地球から離れた場所に滞在する際に, 疾患になった場合に備え, 対策が必要である.本稿では, 宇宙で起こる疾患の中で, 循環器疾患を取り上げ, 宇宙での症例や宇宙医学研究を踏まえ, 循環器疾患の予防,治療法など今後の宇宙での医療について考える. 現在の宇宙での医療体制では限界があり, さらなる研究と医療体制の整備が必要である.

原著
  • 加藤 貴雄, 加藤 和代, 生沼 幸子, 佐藤 恭子, 西村 芳子, 伊藤 紳晃, 今井 夏実, 斎藤 幸恵, 吉田 佳奈, 高秀 早紀, ...
    2024 年54 巻2 号 p. 89-97
    発行日: 2024/05/01
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル オープンアクセス

     背景:働き盛り世代における脂質異常症の実態や他の危険因子との関連性に関しては,いまだ不明な点が少なくない.

     対象と方法: 2010 年度および2020 年度の定期健康診断における血液検査値がすべて確認できた東武鉄道株式会社社員のうち,2010 年度に脂質異常治療薬を服用していなかった3580 例を後ろ向きコホートとして解析対象とし,2020 年度に脂質異常治療薬を服薬中の651 例(薬物治療群)とこれらを服用していない2929 例(非薬物治療群)に分けて,LDL-C の推移と他の心血管リスク因子との関連性について検討した.また職種による違い,および2010 年度のLDL-C (mg/dL) をA: < 120,B:120-139,C:140-159,D:160-179,E: ≧ 180 の5 カテゴリーに分けての検討も行った.

     結果:1)LDL-C には職種間の差はなかったが,駅務グループではBMI とHbA1c が有意に高く,乗務グループでは年齢が有意に低く,事務グループでは血圧とeGFR が有意に低いという特徴があった.2)薬物治療の有無にかかわらず,BMI,HbA1c の有意な上昇,収縮期血圧,尿酸,eGFR の有意な低下を認めたが,BMI,HbA1c の上昇率は,薬物治療群で顕著であった.3)2020 年度のHbA1c ≧ 6.5%あるいは糖尿病薬物治療中の者の割合は,薬物治療群では非薬物治療群のおよそ4 倍であった.4)2010 年度のカテゴリー別に2020 年へのLDL-C の推移を見ると,薬物治療群ではカテゴリーA で上昇したが,B,C,D,E いずれも有意に低下していた.一方非薬物治療群においても,A で有意に上昇,B では不変であったが,C,D,Eではいずれも有意に低下していた.

     結論:本研究の結果,一般成人における脂質異常症の実態ならびに脂質異常治療薬の有用性と問題点が浮き彫りになり,治療戦略を立てるうえで考慮すべきと結論された.

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