抄録
高気圧作業環境下の粉塵,照明,温湿度や騒音などについての調査が行われた.その結果,以下の知見が得られた.
1) 高気圧環境の全国的な規模での調査が初めて実施された.
2) これまで環境制御に関する配慮はほとんどなされていなかった.
3) じん肺の危険を有する隧道作業員の高気圧作業環境への流入(29.2%)が認められた.
4) 圧作業環境での粉塵量はかなり多いが,今回の調査では遊離けい酸などの有害物質は発散されていなかった.
5) 90%前後の湿度を有しているので湿式作業となり,防塵対策の役割を果たしていた.
6) 照明は不備で,特に作業面への配慮がなされているとはいえなかった.
7) 環境温度は地下作業の利点を有効に生かしており,問題となる点はあまりなかった.
8) しかし,ロックの暖房と圧縮空気熱により,加圧時に60℃にもなっていた作業場もあり,環境温度制御が正しく行われているとはいえなかった.
9) 全作業場に騒音発生源があり,労働環境としては不適当な騒音環境といえた.
総合的に考察した結果,高気圧環境の環境制御は不十分であり,衛生対策はあまりとられていないといえよう.減圧症発症率などの疾病に関する調査結果については別の機会に譲るが,ほぼ満足できる予防対策がとられるようになった今日,高気圧環境作業における課題は環境制御であり,災害や事故の予防のうえでも作業員のストレス原因とならぬような配慮はぜひ実現されなければならないと示唆された.